こんにちは。クリエイティブディレクターの竹内です。
書籍から学びを得ることは大切ですが、せっかく学ぶなら自分の中だけで終わらせるのはもったいない。
そんな話を社内でしていたことをきっかけに、この『Think with BOOKS』がスタートしました。
本を読んで考えたことを言葉にしてみる。誰かに読んでもらうことで、自分自身の理解も深まるし、CNSという会社がどんなことを考えながらものづくりをしているのかを知ってもらうきっかけにもなる。そんな場になればと思っています。
第1回で紹介するのは、孫泰蔵さんの『冒険の書 AI時代のアンラーニング』です。
『冒険の書』とはどんな本なのか
知り合いから「ビジネス書」として紹介された、起業家の孫泰蔵さんの著書『冒険の書 AI時代のアンラーニング』を読みました。
「AI時代のビジネスをどう生き抜くか」という内容かと思って読んだのですが、中身は全然違いました。一言でいうと、本全体が「答え」を提示するのではなく、著者が抱いた「問い」を起点に、歴史上の教育家や思想家たちと対話を重ねていく「探究の旅」を描いた一冊です。
私たちが当たり前だと思い込んでいる学校のシステムや、競争を煽る社会のあり方を、著者自らが「アンラーニング(学びほぐし)」していく前半のプロセスが面白く、知的な内容に満ちていて、一気に読み進めてしまいました。
今回は、この本を読んで私自身が「すごく納得した」ポイントと、そこから考えた「これからのものづくり」について、感想を書いてみたいと思います。
小さな「問い」に始まり、「つくる」ことで「わかる」ようになる
本書の後半に描かれるビジョンについては、読者の現状や立場によって少し好みが分かれる結論かもしれないなと感じる部分もありましたが、前半で語られる「学び」や「探究」の本質、そして「つくること」の意味について書かれたこの一節に納得しました。
人に伝えたいことがあるのだけれど、言葉ではうまく伝えられない。だから、その人にわかってもらおうと思ってなにか形のあるものをつくる。しかし、つくることによっていちばんわかるのは実は自分であり、そうして以前よりうまく相手に伝えられるようになる。
(中略)
小さな「問い」に始まり、「つくる」ことを通じて「わかる」ようになる。同時に「わからない」こともたくさん生まれ、そこからさらなる「問い」が生まれる。それらを繰り返していくうちに、なにか「形になったもの」が生まれる。
それがなにかを解決していたら「イノベーション」と呼ばれ、人類のまったく新しい知を開くものであれば「発明」と呼ばれ、人の心を動かすものであれば「芸術」と呼ばれる。
本文より
この一節は、まさにクリエイティブワークの本質だなと感じます。
企画でも、デザインでも、映像でも、あるいは文章を書く仕事でも、最初から頭の中に「完璧な完成形」や「クリアな答え」が用意されていることはありません。何かを伝えたい、もしくは何かを解決したいけれど、言葉ではうまく説明できない。そんな、まだもやもやした状態からものづくりはスタートします。
だからこそ、理屈だけでこねくり回すのをやめて、まずは手を動かし、プロトタイプやラフをつくってみる。
そうすると、実際につくるプロセスの中で、「自分が本当に伝えたかったのは、こっちだったな」「この2つを掛け合わせることで表現できそうだな」と、つくり手自身の頭が整理されて、研ぎ澄まされていく。
「つくることによっていちばんわかるのは実は自分」という著者の言葉は、クリエイティブに携わるすべての人にとって、日々の仕事の中で感じているリアルな実感ではないでしょうか。
小さな「わからない(問い)」を抱えながら、まず「つくってみる」。それによって「わかる」と同時に、また新しい「わからない(次の問い)」が生まれ、またつくる。この探究のループを何度も回した先にこそ、本当に誰かの心を動かす表現や、課題を解決するアウトプットが生まれるのだと思います。

ユクスキュルの機能環
AIの時代だからこそ、CNSとして「問いを立てなおす」
この「つくることを通じた探究のプロセス」を、私たちCNSでは、一人だけで完結させるのではなく、異なる専門性を持つメンバーがフラットに集まる「チームを超えたコミュニケーション」のなかで回すことを大切にしています。
イベント、デザイン、映像、デジタル領域など、それぞれ異なる強みを持ったメンバーがひとつのプロジェクトを囲み、お互いの領域を越境してディスカッションを重ねていく。一人で机に向かっているだけでは届かなかった多角的な視点やアイデアが、チームの対話の中でどんどん深まっていく面白さを、私たちは大切にしています。
そして、生成AIの時代だからこそ、いまCNSが重要視しているのが、「問いを立てる」こと、そして「問いを立てなおす」ことです。
AIは、与えられたプロンプト(問い)に対して、すぐに整った「回答」をくれます。
でも、「その問い自体が、本当にクライアントのためになっているのか?」を疑い、問いを立てなおすことは、人間にしかできません。
クライアントからの「展示会のパンフレットを作りたい」というご相談に対して、ただそのまま形にするのではなく、(クライアントが本当に欲しいのはパンフレットではなく、その先にある顧客との繋がりだよな・・・。 であれば、別の体験に予算を使った方がいいかも?)と、そもそも何が本質的な課題なのか「問いを立てなおす」パートナーであること。それこそが、これからの時代のクリエイターの価値だと考えています。
『冒険の書』の「正解がない時代だからこそ、自ら問いを立て、つくって、探究し続けるしかない」という、そのアプローチの重要性には深く共感します。
ロジックだけでは到達できない「心を動かす解決の形」を目指して、私たちはこれからも、新しい問いを立てなおし続けていきたいと思います。