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【Think with BOOKS #2】「まぁまぁいい感じのもの」は、もう頼まれない。『AIが答えを出せない 問いの設定力』
【Think with BOOKS #2】「まぁまぁいい感じのもの」は、もう頼まれない。『AIが答えを出せない 問いの設定力』

こんにちは。代表取締役CEOの古田旭です。

社員それぞれのおすすめ本を通じて、日々のインプットや仕事への想いを綴る連載「Think with BOOKS」。第1回で竹内が『冒険の書』を取り上げ、「問いを立てなおす」ことについて書いていました。今の時代に、とても良いテーマなので2年前に出版された本を引っ張り出して、読み直してみたところ、当時よりも響くことが多かった一冊です。

紹介するのは、鳥潟幸志さんの『AIが答えを出せない 問いの設定力』(クロスメディア・パブリッシング)です。

この本が言っていること

生成AIを活用したサービス開発に早い段階から取り組まれている著者の鳥潟さんは、本書を通じて、こんなメッセージを発信しています。

  • AIが得意なのは、与えられた問いに正解を見つけること。この力で人間はもうAIに勝てない
  • どんなに良い問いを立てても、AIが出すのは選択肢まで。受け入れるかどうかを決めるのは人間
  • だからこれからの人間に必要なのは「問いの設定力」「決める力」「リーダーシップ」の3つの力
  • そして、その3つの質を左右する土台が「自分らしさ」。自身の人生観、哲学、志

詳しくはぜひ本書を読んでいただくとして、今日はこの中から私に特に刺さった2つ”問いの設定力と決める力”を入り口に、いま私が考えていることを書きたいと思います。

「まぁまぁいい感じのもの」は、もう頼まれない

シー・エヌ・エスは創業以来、「良質なクリエイティブを世の中へ」というスローガンを掲げてきました。

3年前に経営を引き継いだとき、私はこの言葉と改めて向き合いました。当時、AIがここまで速く進化するとは正直思っていませんでしたが、「つくること」自体の価値はこれから変わっていくだろう、という危機感を感じていました。だからこそ、シー・エヌ・エスは何のために存在するのか?私たちが生み出している価値は本当は何なのか?に向き合い直し、いまのパーパス「Make it better with Creativity〜創造性という力であらゆるものをより良くする〜」に辿り着きました。「つくること」は手段であって、目的ではない。そして、我々の価値創造の源泉が「クリエイティビティを駆使できること」だと辿りつきました。

3年経ってみて、あの時、問い直してよかったと感じています。

今や平均的なクリエイティブは、ほぼゼロのコストで無限に作れるようになりました。誰でも一定レベルのコピーっぽいもの、ビジュアルっぽいものが作れる時代に突入しています。
つまりこの先、まぁまぁいい感じのものは、我々に頼まなくなる時代に入ったのだと思います。

そこで問うべきは、「では、それでもクライアントが私たちに依頼してくれている仕事では、本質的に何を求められているのか?」ということです。

求められているのは、答えではなく問い

その答えのヒントが、本書に出てくるあるディスカッションの例にあります。

「理想のオフィスとは何か」を議論しているチームで、ある部下が言います。「なんでも回答してくれる人型ロボットがいると良い」。

ここで、二人の上司の問い方が分かれます。一人目の上司は、実現の手段を問う。「それ、どうやって実現するの?」。実現できるはずがないので、部下は黙る。しかもこの瞬間、他のメンバーも「実現可能性とセットでないと発言してはいけないんだ」と口をつぐんでしまう。会議が凍るわけです。

二人目の上司は、狙いを問う。「面白いね。なんでそれがいいと思うの?」。すると「困ったときに、専門知識をすぐ教えてくれる存在がほしい」という本音のニーズが出てくる。そこで「ロボットは難しいとして、その目的を叶える別のアイデアはない?」と促すと、議論が一気に動き出す。

同じ発言を受け取っても、問いの立て方ひとつで、チームのアウトプットがまるっきり変わってしまうのです。

私たちの仕事も同じです。クライアントからいただくオリエンは、いわば「与えられた問い」です。それをそのまま解けば、まぁまぁいい感じのものはできます。でも、それはもうAIでできてしまう。私たちが本質的に求められているのは、その手前で「そもそも何のためのプロジェクトか」「本当に解くべき課題はどこにあるか」を問い直し、クライアント自身もまだ言葉にできていない狙いを掘り当てることです。今、シー・エヌ・エスではクリエイティブワークフローを下図のように定めています。これはまさに、手段の前に目的を問い直せ、という話です。

問題提起・期待超越

AIは、与えられた問いには驚くほどうまく答える。でも、何を問うべきかは決めてくれない。だから、問いを立てる力こそが、私たちの商品になっていく。

AIの答えに、ダメ出しできるか

もうひとつ、私たちが磨いていかなくてはならないのは、何をAIに任せて、その先に自分は何を生み出すのか。そして、AIが出す答えに、自分の価値観をしっかり持ってダメ出しをして、超えていくということです。

AIに問いを投げれば、もっともらしい答えがいくつでも返ってきます。問題は、それをどう扱うかです。そのまま採用するのか。どこが物足りないかを見抜いて、超えにいくのか。ここで効いてくるのが、本書で言う「決める力」です。

本書には、意思決定のための2つの型が紹介されています。ひとつはモノの見方3原則、物事を「多面的」「長期的」「根源的」に見る。もうひとつが意思決定3作法、「頭で考え、心で感じて、腹で決める」。ロジカルに考え抜き(頭)、その決定で誰がどんな思いをするかを感じ取り(心)、それでも最後は自分の信念で決め切る(腹)。考えるほど、共感するほど迷いは増えるからこそ、最後は腹だ、というこの考えには唸りました。

私自身、大きな決断の前に必ず自分に投げかける問いがあります。

その意思決定は、格好良いか?

ロジックを尽くし、関わる人の顔を思い浮かべたうえで、最後は自分の軸に照らして決める。AIの出す答えにダメ出しできるかどうかは、結局、自分の中にこの「軸」があるかどうかだと思うのです。

点と点を繋ぐ、その飛距離が、驚きをつくる

では、AIに任せた先で、私たちは何を生み出すのか。私はよく社内会議や研修で凡人と天才の違いとして東京の鉄道路線図の話をします。

人間は昔から、自分の脳の限界をよく理解していました。記憶しきれないからノートにメモを取り、ハードディスクに記録してきた。いわば、脳の記憶機能をテクノロジーに委託してきたわけです。自分が経験したこと、得た知識を、いつでも思い出して使えるように。

AIの進化が変えたのは、ここです。自分が経験したことだけでなく、自分が経験していないことまで含めて、世の中にデータ化されているすべてを、自分の外部記憶のように繋ぎ合わせられるようになりました。

50年前の東京の路線図と、現代の路線図を思い浮かべてください。駅の数も、路線の絡み合い方も桁違いです。50年前は渋谷から上野へ行こうとしたら、外回りでいくか、内回りでいくかくらいしかありませんでした。それが、現代は時間に制約を与えなければ、途中にさまざまな駅を経由して、いろいろな路線を乗り換えて、いわばこれまで無関係だと思われていた点を繋ぎ合わせた線を引くことができます。これが天才が我々に与えてくれる驚きや感動です。
直線飛距離が長いと、そこを一足飛びで飛べるんじゃないか?という勇気はなかなか持てません。でも、その間に、この辺とこの辺に、今は見えていないけど、実は飛び石があって、2回くらい足をついて飛び越えられるんじゃない?という想像力や仮説をたてる力があると、今はAIがその点を繋げるさらなる飛び石を見つけてきてくれて、縦横無尽にアイデアを繋いでいくのを助けてくれます。

改めてクリエイティビティとは何かといえば、普通で考えたらつながるとは思わない点と点を繋いで、驚きと感動と納得をつくることだと私は思っています。そしてこの繋げる点と点の飛距離が遠ければ遠いほど、驚きや感動は大きい。

今や点は無限にあります。どの点とどの点を繋げば人の心が動くのか、どこまで遠くへ飛べるのかを見定めるのが人間の仕事です。AIは点を増やしてくれた。飛距離で勝負するのは、私たちです。

なぜ、この仕事をしているのか

本書では、問いの設定力も決める力も、突き詰めればその人の「自分らしさ」人生観、哲学、志から生まれる、と述べられています。

シー・エヌ・エスは、「なぜ、クリエイティブを生業にしているのか?
それを言語化したものがこれらです。

  • パーパス「Make it better with Creativity
  • ビジョン「Expand the Possibilities
  • ミッション「Challenge is Unlimited

また、私個人としては、「作品と事業と生き方を通じて、かかわる全ての人と社会の可能性を拡張し続けたい」と考えています。

シー・エヌ・エスが掲げるビジョンの「Expand the Possibilities」は、実は私自身がなぜこの仕事をしているのか?という問いの答えとも大きく重なっています。
⽇本では「私なんてまだまだです。」と、⾃分の可能性を謙遜という形で⼩さく⾒積もってしまう⼈が多いと思います。謙遜は日本人の心の美しい一面でもありますが、それによって可能性が制限されてしまっているのも事実だと思います。それはなんとかしないといけません。もっともっと自由闊達にクリエイティビティという武器を活かして、自分の可能性に蓋をせず可能性を広げ、ひいては社会への影響力をどんどん大きくして行ってほしいと考えています。

最後に

答えを出す力の価値が下がるほど、問いを立てる力の価値は上がる。そして、良い問いは、自分が何者で、何を成したいかを知っている人からしか生まれない。

あなたがいま、自分に立てている問いは何ですか。

その問いの質が、これからの仕事の質を決めていきます。シー・エヌ・エスは、良い問いを立て、一見、つながるとは思えない点と点を繋ぐ、創造性で世の中をより良くしていく集団であり続けたいと考えています。

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