こんにちは。おすすめ本を通じて、日々のインプットや仕事への想いを綴る連載「Think with BOOKS」。
第5回は、坂上からご紹介させてください。
今回取り上げるのは、鈴木亜佐子さんの『スタンフォード式 最高の休み方』(すばる舎)。
先日のお盆休み、久しぶりにまとまった休みを取り、私の実家のある群馬に帰省。プールやら、山やら、家族との時間を楽しんだが、ふとした瞬間には、どこか仕事のことを考えていたり、メールも返していたり、「あれ、これって休めてるのか?」と、ふと我に返る瞬間があった。
休みのあり方について、ちゃんと考え直すには良いタイミングだったのかもしれない。そんな時にたまたま目に留まったのが本書。
有意義な休みの過ごし方、というよりは、休息そのものが持つメリットを、いかに効果的に引き出すか。そこにフォーカスした一冊です。
働き方改革は進んだ。でも、まだ足りていないもの
ダイバーシティ、ワークライフバランス、時間外労働の是正。
待遇面だけで見れば、日本の働き方は確実に良い時代になった。
でも、それだけでは足りない。
限られた時間の中で、いかに成果を最大化するか。
そこにグローバルスタンダードで適応していくことが、これからの日本のビジネスには求められていることだと感じる。
「1万時間の法則」というのをご存知だろうか。
ある分野で一流になるには1万時間の努力が必要になるという、スウェーデンの心理学者が提唱した理論。
1日8時間・週5日働いたとしても、単純計算で5年はかかる。近道はできない。
ただし、ダラダラ積み上げた1万時間には意味がない。限られた時間をいかに凝縮し、成果に変えていくか。 それは日本にとっても、避けて通れない課題なんだと思う。
そして本書は、まさにその「集中力の中身」の話を、休む側からのアプローチで教えてくれる。
「時間」ではなく「エネルギー」を管理する
時間管理ではなく、エネルギー管理へ。
人間が高い集中力を発揮できるのは、1日あたり3〜4時間が限界。
それ以上長く机に向かっても、成果はさほど変わらない。
重要なのは「長く働くこと」ではなく、「エネルギーを高く保ち、判断の質を上げること」。
「今日は12時間働いた、頑張った!」と思っていても、実際その中で本当に頭が冴えていた時間って、正直数時間しかなかったりする。
残りは、気づけばメールやチャットの返信で大半を消化している。。
思い当たる節あるのは、私だけではないはず。
でも、これは別にサボっているわけじゃないらしい。
集中力が高いレベルで持続するのはせいぜい3〜4時間というのは、脳の仕組み上、人間として至って正常な反応なんだそうだ。
だとすれば大事なのは、その数時間をいかに濃く使うか。
そして、その数時間の質を上げるためのエネルギーを、いかに充電しておくか。
ここで「休み方」というテーマがつながってくる。
休むことは、サボることじゃない。
次の”頭が冴えている数時間”をつくるための、準備そのものなんだと思う。
本書では、GAFAMをはじめとするシリコンバレー企業の事例が随所に紹介されている。
例えば、勤続年数に応じて4〜6週間ものサバティカル休暇(長期休暇)を取得できる制度。
社員が個人の目標やキャリアに向き合うための時間として、会社側が積極的に用意しているという。
働きづめの象徴のように語られがちなシリコンバレーだが、実は「休むこと」自体を、創造性と持続性を高める投資として、制度レベルで組み込んでいる。
ここが、まさに目からウロコだった。
休むことで、新しい発想が生まれる。
休むことで、チームに好循環が生まれる。
休むことで、家族との時間や、人生の基盤が整う。
「休む」は、決してサボりでも、逃げでもない。
成果を出し続けるための、れっきとした戦略なのだ。
クリエイティブ業界と、「長時間労働」という呪い
さて、ここからは我々の話。
私たちのようなクリエイティブ・制作の業界は、自ら考え、自ら手を動かしてつくり上げることが求められる仕事だ。
「自分で動いてなんぼ」という気質もあって、世間からは長時間労働の代名詞のように見られがちだし、正直、当の本人たちすら、どこかでそれを誇りのように感じてしまっている節がある。
そこに輪をかけて、日本人が元来持っている、「長く働くことこそが美徳」という、根深い文化。。
業界的にも、国民性的にも、本書が説くエネルギー管理の思想とは、正直かなり相反する土壌にいる。
とはいえ、それは言い訳なんだと思う。きっと何か道があるはず。
本気でこの矛盾に向き合うタイミングが、きているんだと思う。
本質を伸ばす働き方と、それに連動する休み方へ
本質的な仕事の進め方を磨いていくこと。
それと連動する形で、休み方そのものをアップデートしていくこと。
定型的な作業や情報整理においては、AIをはじめとするテクノロジーにも解決のヒントがある。
人間にしか生み出せない発想やアイデア、問いを立てる力にこそ、限られたエネルギーを注いでいく。
そうやって仕事の密度を上げていく先に、本当の意味で「ちゃんと休める」働き方が実現できると感じている。
そして、シー・エヌ・エスと共に仕事をしてくれる仲間たちが、仕事も人生も、両方ちゃんと豊かにしていけること。
長時間労働が当たり前とされてきたこの業界において、そのあり方を変えていくパイオニアに、私たちがなれたら。。
そんなことを、本書を読みながら本気で考えた。
まずは自分自身、今度の休みからアップデートしてみようと思う。
(と言いつつ、休み中もスマホでメールチェックしてしまう自分がいるのは、また別の話。。)