ブログ
BLOG
COLUMN
【Think with BOOKS #7】『王者の挑戦「少年ジャンプ+」の10年戦記』につまった挑戦を支える仲間たちの姿から考える、私たちの仕事。
【Think with BOOKS #7】『王者の挑戦「少年ジャンプ+」の10年戦記』につまった挑戦を支える仲間たちの姿から考える、私たちの仕事。

こんにちは。CNS代表取締役CEOの古田です。
本を片手にちょっと考えてみる。CNSで働くメンバーが、本をきっかけに日々のインプットや仕事、クリエイティブへの想いを綴っていく連載『Think with Books』。今回取り上げるのは、戸部田誠さんがマンガ雑誌アプリ「少年ジャンプ+」の秘密に迫るノンフィクション『王者の挑戦「少年ジャンプ+」の10年戦記』(集英社)です。

少年ジャンプの新しい挑戦を描いたこの本を読み進めるうちに考えたのは、私たちがクライアントの挑戦に「仲間」として参加するには、何が必要なのかということでした。相手を知り、好きになり、その横に立つという仕事との向き合い方について、書いてみたいと思います。


「ジャンプ読んだ!?」
子供の頃、毎週月曜日の朝、教室での会話はだいたいこのひと言から始まりました。
『ドラゴンボール』『幽☆遊☆白書』『ろくでなしBLUES』『SLAM DUNK』。そんな作品が並ぶジャンプとともに過ごした少年時代。あまり大きな声では言えませんが、毎週日曜日の13時になると、いち早くジャンプが手に入る秘密の駄菓子屋があり、金曜日くらいから日曜日が楽しみだったのを覚えています。

社会人になってからもしばらくは毎週買っていました。通勤中に読んで、オフィスに着いてデスクに置いておくと、先輩たちが持っていって、それぞれ好きな作品を読んでいました。

いつからか買わなくなってしまったけれど、『王者の挑戦「少年ジャンプ+」の10年戦記』を読んで、久しぶりに漫画を読みたくなりました。本書には、編集者や作家、社内外のスタッフ、開発会社などへの取材を通じて、「少年ジャンプ+」が生まれ、育っていく過程が描かれています。

私は、困難に立ち向かい、道なき道を切り開いていく物語に弱い(笑)。

企業創業の話もそうだし、フィクションでも『華麗なる一族』や『半沢直樹』のような物語には、ついその世界に入り込んでしまう。ドキドキするし、ワクワクする。

本書も、私にはそういう一冊でした。

「ジャンプ」という大きな看板の裏側にいる一人ひとりの仕事人。その人たちが、何を信じ、何にこだわり、誰と力を合わせて進んできたのか。著者自身も、挫折を経験した人々が、縁でつながり、支え合いながら奮闘する姿を描いたと説明しています。

この本を手に取ったきっかけは、ベンチャー戦略を学ぶクラスで先生にお薦めいただいたことでした。イノベーションが生まれる舞台裏や、成功したサービスの仕組みを学ぼうと思って読み始めたのですが、そこで働く人たちの挑戦を追体験しているうちに、このコラムで書きたいことが見えてきました。

何が起きたかというと、読みながら何度も、普段一緒に仕事をしているクライアントの顔が浮かんできたんです。

私たちとのミーティング以外の時間に、彼らは何に向き合っているんだろう。

本を読みながら考えたのは、そんなことでした。

今、一緒に仕事をしている、あのサービスの担当者は私たちと会っていない時間に、どんな困難に立ち向かっているのだろう。

社内で何を説明し、誰と議論し、どんな判断に迷っているのだろう。

そもそも、その人は、どんな未来を実現したくて、この仕事をしているのだろう。

私たちが受け取るのは、「サービスの価値をもっと伝えたい」「クリエイティブコンセプトを一緒に考えてほしい」「映像をつくりたい」「イベントをつくりたい」といった相談です。

でも、その相談が私たちのところに届くまでには、きっと、私たちの知らない時間があります。

なかなか伝わらなかった提案。何度もやり直した企画。ようやく得られた理解。それでも、まだ乗り越えられていない課題。

私たちが打ち合わせで聞く依頼内容は、その人たちの挑戦の、ほんの一部分だと思います。

本の中の集英社を、自分たちのクライアント企業に重ねてみる。登場する編集者たちを、いつも会議で話している担当者に重ねてみる。

すると、もっと相手のことを知りたくなる。

この人たちは、何を実現しようとしているのだろう。私たちは、そのどこに加わろうとしているのだろう。

どうやら私は、惚れっぽいらしい。

新しい相談を受けたとき、私はまず、クライアント理解が大事だといつもチームに話しています。チーム内では「Understanding」と呼んでいることです。そう、クライアント企業そのものと、その企業が置かれた業界・市場への理解です。

その会社は、中長期的にどこを目指しているのか。今回の相談は、その中でどんな役割を担っているのか。どんな強みがあり、市場からはどう見られているのか。

そういうことを調べているうちに、よく思う。

「この会社、めっちゃいいじゃん!」

製品のことを知る。技術の背景を知る。それを必要としている人のことを知る。そして、そこに関わる人たちの思いを知る。

すると、だんだん好きになってしまう。どうやら私は、惚れっぽいらしい。

今回の読書も、ある意味、そういう体験でした。

「ジャンプ+」をつくっている人たちのことを知るほど、彼らがつくっているものを読んでみたくなる。どんな作品があり、どんな体験ができるのか、自分でも確かめたくなる。

クライアントについて調べているときにも、同じようなことが起きているのだと思います。

そして、好きになると、仕事の考え方が少し変わる。

「何を頼まれたか」だけでなく、「この会社がもっとよくなるために、何ができるだろう」と考え始める。

理解することは、提案のための情報収集であると同時に、相手の挑戦を、自分も参加したい挑戦に変えていく時間なのかもしれません。

向き合うだけでなく、横に立つ。

依頼されたことを、きちんとやる。それは当然、大切なことです。でも、私たちの仕事を、そこで終わらせたくはない。

クライアントが依頼を出す。私たちが提案を返す。クライアントが修正を求める。私たちが直して返す。

もちろん、仕事にはそういうやり取りが必要です。ただ、その往復だけになってしまうと、「相手の要望にどう答えるか」「相手にどう評価してもらうか」ばかりを考えてしまうことがあります。

気づけば、クライアントと私たちが向き合ったまま、その間でボールをやり取りしているだけになってしまう。

ボールは行き来していても、私たち自身はその場に留まったまま。

でも、本当に変えたいことは、二人の間ではなく、その先にあるはずです。

まだ価値を知らないお客さんに、どう届けるか。理解されていない技術を、どう伝えるか。新しいサービスを、誰かの生活や仕事に、どう役立ててもらうか。

だから私は、クライアントと向き合うだけでなく、横に立ち、同じ方向を向いて進もうとすることが何より大切だと考えています。

野球のキャッチボールというより、ラグビーのパスの感じですかね。前にはパスを出せなくても、仲間にボールをつなぎながら、チームとしては同じゴールへ前に進んでいく。そんな感覚です。

「この案でよいですか?」だけでなく、「実現したいことに近づくには、どうしましょうか?」と一緒に考える。

ただ、横に立つからといって、何でも賛成すればよいというわけではありません。好きになったからこそ、うまくいかないかもしれないことも伝える。実現したい未来と、実際に起こりそうなことは、分けて考える。

「こうなってほしい」という願いを共有しながら、「この方法で本当に届くのか」は冷静に確かめる。

同じ方向を向くというのは、そういうことでもあると思っています。

自分の専門性で、同じ挑戦に参加する。

本書の中で、私たちの仕事と重ねて考えたのが、開発に関わった「はてな」さんのエピソードです。

なかでも、ビューアーの開発に携わった石田さんの話が印象に残りました。

海賊版サイトは、作家や出版社にとって許されない存在です。けれども石田さんは、技術を担う立場から、読書体験の面でも負けてはいけない相手だと捉えていました。

作品をきちんと保護しながら、速く、快適に読める環境をつくる。その両立に技術で挑もうとしていた心意気が描かれている。

私が惹かれたのは、そこに、開発者自身の譲れないものが見えたことです。

編集者と同じ仕事をしているわけではない。マンガを描くわけでもない。でも、作品を読者に届けるという挑戦に、自分の専門性から参加している。

私は、こういう関わり方が「仲間」としてプロジェクトを進めている関係だと思います。

クライアントと同じ立場になる必要はないし、同じ理由で熱くなる必要もない。

「これだけ価値のある技術が、伝わらないままなのはもったいない」
「このサービスが必要な人に届くために、体験のつくり方でもっとできることがある」
そんな、自分たちの仕事だからこそ見える課題があるはずです。
そこに、自分たちのこだわりを持つ。

イベント、映像、デザイン、Web、システム。手段は違っても、その専門性を、相手の挑戦を前に進めるために使う。

それは、ただ相手の熱量に合わせて頑張ることとは、少し違います。

その仕事の中に、自分も実現したいことを見つける。
ということだと考えています。

クライアントの物語の中に、入っていこう。

「ジャンプ+」が、どんな困難を乗り越え、どんな未来へ向かっているのか。詳しい話は、ぜひ本を読んでほしいと思います。

私がこの本を読みながら感じたのは、これは、自分たちから遠いところにある特別な物語ではない、ということです。

今、一緒に仕事をしているクライアントの中では、私たちがまだ知らない挑戦が行われています。

大きく変わる社会の中で、自分たちの価値を問い直している人がいます。まだ理解されていない可能性を、なんとか形にしようとしている人がいます。

私たちは、その過程のどこかで、声をかけてもらっているわけです。

そう考えると、打ち合わせで聞きたいことも、提案するときに考えたいことも、変わってきませんか?

「何をつくりますか?」の前に、「何を実現しようとしているんですか?」と聞きたい。

その答えを知ったうえで、「それなら、私たちはこんなことができます」と返したい。

CNSも、そんなふうにクライアントの挑戦を共にする仲間として、選ばれる会社でありたい。

依頼を受ける相手としてだけでなく、「一緒にこの会社を盛り上げたい」と、横に立つ仲間として。

この本を読んで、少年ジャンプ+を読みたくなりました。

そしてそれと同じくらい、今、一緒に仕事をしている人たちのことをもっと知りたくなりました。

CONTACT

Create Value
Together.
Create
Value
Together.